「チャイコフスキー・ファンタジー」に続くキングインターナショナル企画によるペンタトーン・レーベル制作第2号はベートーヴェン・イヤーに贈る最高の変化球です。
児玉麻里にとりベートーヴェンは特別に大切な作曲で、これまでピアノ・ソナタとピアノ協奏曲全曲を録音し高い評価を受けています。その補巻ともいうべき当アルバムは仰天の内容。何とベートーヴェンの弦楽四重奏曲に挑戦しました。しかし決してキワモノでも珍奇な企画でもありません。編曲者がサン=サーンス、バラキレフ、ムソルグスキーといういずれもピアノ音楽の傑作を残しているひとかどの作曲家である点も注目です。
ベートーヴェンは32のピアノ・ソナタを残していますが、最後の32番も1822年の作で、その後の晩年の至高の世界はピアノと遠いものでした。ベートーヴェンが生涯にわたり作り続けたのは弦楽四重奏曲で、最後の数曲は時代を踏み越えた新次元に達していると申せましょう。ベートーヴェン好きのピアニストにとり、この世界を担える弦楽器奏者は羨望の存在でした。それが今回実現。編曲者は大物ながら、児玉麻里はあくまでベートーヴェンの側から見た世界を主にしています。
興味深いのは、3者が原曲をただピアノに置き換えるのではなく、それぞれのピアニズムを反映させつつ完全なピアノ曲にしていること。原曲を知らなければ、オリジナルのピアノ曲として違和感なく受け入れられます。ことにサン=サーンスとバラキレフは難技巧の要求されるピアノ曲が多く、それらと同様のレベルが要求されるものとなっています。
超お宝がムソルグスキー編曲による第16番。ムソルグスキーはもっぱら編曲される側の作曲家で、彼の編曲は極めて珍しいと申せましょう。ムソルグスキーはベートーヴェンを崇拝し、彼の激しく革新的な音楽の原点だったことを認識させてくれます。この編曲は楽譜が極めて入手困難なためムソルグスキー研究家の間でも伝説となっていました。それがついに音になりました。ベートーヴェン最後の弦楽四重奏曲の異常な感覚がムソルグスキーの異常な感覚とあいまって世にも稀な逸品となっています。
おまけとしてベートーヴェンがモーツァルトの名作「クラリネット五重奏曲」のフィナーレをピアノ独奏用に編曲したものも収められています。ベートーヴェン鍾愛の曲として知られていますが、その編曲も貴重な限り。ベートーヴェンらしいピアノ書法となっていて興味津々です。
児玉麻里はこれまでのベートーヴェン演奏で培った理解をさらに先へ進めた神業。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を弾くのはもちろん初めての経験ながら、深みと説得力に満ちています。数々のベートーヴェンCDがリリースされる2020年にひときわ異色を放つ名盤が誕生です。
【曲目・内容】 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲より
1.サン=サーンス編曲:第7番「ラズモフスキー第1番」Op.59の1 ~第2楽章アレグレット・ヴィヴァーチェ・エ・センプレ・スケルツァンド 2.サン=サーンス編曲:第6番Op.18の6~第2楽章アダージョ・マ・ノン・トロッポ 3.バラキレフ編曲:第8番「ラズモフスキー第2番」Op.59の2~第3楽章アレグレット 4.バラキレフ編曲:第13番Op.130~第5楽章カヴァティーナ 5.ムソルグスキー編曲:第16番Op.135~第2楽章ヴィヴァーチェ 6.ムソルグスキー編曲:第16番Op.135~第3楽章レント・アッサイ 7.モーツァルト(ベートーヴェン編曲):クラリネット五重奏曲K.581~第4楽章アレグレットと変奏曲
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【アーティスト(演奏・出演)】
児玉麻里(ピアノ)
【レコーディング】
録音:2019年10月/MCOスタジオ1、ヒルフェルムス(オランダ)
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